モルヒネ

ウィキペディアより

モルヒネ

アヘンに含まれるアルカロイドの主成分
モルヒネ(莫児比涅[1]: morfine: morphine英語発音: [ˈmɔːrfiːn])は、ベンジルイソキノリン型アルカロイドの一種で、チロシンから生合成されるオピオイド系の化合物である。ケシを原料とする。脳内や脊髄に作用し、痛みを脳に伝える神経の活動を抑制し、鎮痛作用を示す。
 

きわめて強力な鎮痛作用を持ち、日本では薬機法に定められた、重要な処方箋医薬品である。とくに持続する疼痛である鈍痛に効果が高く、一般的な鎮痛薬が効きにくい内臓痛をはじめ、各種がん性疼痛や手術後の術後痛にも適応する。有効限界がないのも特徴で、より強い痛みに対しては用量を増やすことによる対応が可能である[2]

その一方で適切に使わねば強い中毒性・常習性を持つため(医療の鎮痛目的には使用方法が確立されており、適切に使えば依存することはない)、毒薬(薬機法)麻薬(麻向法)として規制されている。

歴史

 

1804年、ドイツの薬剤師フリードリヒ・ゼルチュルナーによって初めて分離された(この物質は、史上初めて薬用植物から分離されたアルカロイドとなった)。ゼルチュルナーは、この薬が「夢のように痛みを取り除いてくれる」ということから、ギリシア神話に登場する、ケシの花に囲まれて眠るという夢の神モルペウス (Morpheus) にちなんでモルフィウム (morphium) と名づけ、効用の研究・宣伝に当たった。

1805年には鎮静催眠薬として精神医学にも導入された[19]

しかし、1853年の皮下注射針の開発までは、モルヒネは普及しなかった。鎮痛のために用いられ、また、アヘンアルコール中毒(依存症)の治療として用いられた。南北戦争ではモルヒネは広く使用され、軍人病(モルヒネ依存症)による40万人を超える被害者を生み出した。また普仏戦争において、同様のことが西欧で起こった。

モルヒネの依存症を克服する目的で、モルヒネを原料とするヘロインが1898年に発売された。

落合莞爾氏の著作に詳しく書かれている。